内航海運では、自由な船舶管理契約が認められていません。
何故でしょう?
民-民の契約だから何やったって大丈夫でしょう?という方もいらっしゃいますが、現在のところ、適法な船舶管理契約の形が決められております。
その根拠となっているのは、船員職業安定法です。
しかし、船員職業安定法には、船舶管理業も船舶管理会社も記載されていません。もちろん、同法の施行規則にもです。
根拠は、船員職業安定法第50条で自身が雇用する船員を他人の指揮命令の下で働かせてはダメという内容が規定されていることによります。
その具体的な内容については、平成17年2月15日付の通達(別紙1)「船員職業安定法等の一部改正に伴う船舶管理会社及び在籍出向に関する基本的考え方について」に記載されています。
この中で、船員労務供給事業に当たらない船舶管理会社の要件として、以下の4つが示されています。
1.違法な形態に該当しない船舶管理会社の要件 (1) 船舶管理契約が締結されていること。 船舶管理契約は、船舶の運航管理、船舶の保守管理、船員の配乗・雇用管理を受託者が一括して行うことを内容とするのが通常である。違法な形態に該当しない船舶管理契約は、このように船舶所有者等から運航を委ねられた者が、一定の期間、船舶の具体的な航行に関し一切の義務を負う契約であって、船舶の運航管理、船舶の保守管理、船員の配乗・雇用管理に関し一括して責任を負うものでなければならず、このような船舶管理契約が締結されていることが必要である。なお、違法な形態に該当しないとされた船舶管理契約を締結している当該船舶管理会社が、受託した船舶管理業務のうち船員の配乗・雇用管理等の一部に関する再委託契約を子会社又は他社と締結した場合は、一括して船舶管理を行うものではないため違法な形態に該当しない船舶管理会社とは認めることはできない。 (2) 船舶管理契約に示された船舶管理行為を実態的に行なっていること。 船舶管理契約は、船舶の航行に関し一切の義務を負う契約であるので、船員の配乗管理体制、船員の労務管理体制はもちろんのこと、船舶の運航管理、船舶の保守管理等について実態的な活動を行っている必要があり、これらの業務に関して運送行為を行う海運会社と事実上同等の体制が整備されている必要がある。 (3) 船員を雇用していること。 船員を雇用していることから、当然船員法等の法令が適用されることとなるので、船舶所有者(使用者)としての各種義務が生じることとなる。 特に実態面として、賃金の支払い、船員保険等の加入、人事面の管理等使用者としての基本的な義務と権利を遂行している必要がある。 (4) 船員を指揮命令していること。 船長を通じ、船員に対して指揮命令をしていること。 特に実態面として、労働時間や休日の管理、労働力の支配等使用者としての基本的な義務と権利を遂行している必要がある。 |
上記から、船舶の運航管理、船舶の保守管理、船員の配乗・雇用管理を船舶管理会社が一括して行うことが条件となったのです。
外航の船舶管理を行われている方であれば、そんなことないよと思われると思いますが、平成17年の通達では、このように示され、以来、この3つの管理を行うことが条件となっています。
つまり、この3つの管理(船舶の運航管理、船舶の保守管理、船員の配乗・雇用管理)の1つでも欠けた船舶管理契約は、船員職業安定法に抵触するおそれがあるのです。
船員職業安定法
(船員労務供給事業の禁止)
第五十条 何人も、次条に規定する場合を除いては、船員労務供給事業を行い、又はその船員労務供給事業を行う者から供給される人を船員として自らの指揮命令の下に労務に従事させてはならない。